「卒業生のいま」をお届けする、常陸frogs OBOGインタビュー。初回は、1期生の関根康太(せきね・こうた)さんと伊藤愛基(いとう・まなき)さんにお話を伺います。
frogsプログラムを経験して2年。2人は現在、株式会社Xtravelerの代表(関根さん)、副社長(伊藤さん)として、「ホテルの空室を有効活用し、ホテル側の課題を解決するとともに、宿泊者にはこれまでとは違った新しい旅の体験価値を提供するサービス」の開発に注力しています。
プログラム参加中は、個々にサービスを考えていた2人。一緒に会社を経営することになったきっかけや、frogsに参加しての変化、応援してくれている地域の方々への想いを話してくださいました。
プロフィール
関根康太さん(常陸frogs 1期生)
株式会社Xtraveler 代表取締役
2002年7月7日生まれ。武蔵野大学アントレプレナーシップ学部1年(2022年1月現在)
高校2年生のときに常陸frogsに参加。プログラム期間中に株式会社Xtravelerの前身となる合同会社STOPOVERを起業し、サービス開発に取り組む。さまざまなビジネスモデルを検討した後、Xtravelerにたどり着く。
ホテル・旅館などの常に空いている約4割の部屋を活用した行先がランダムに決まるホテル予約サイトの運営を主なサービスとし、どこに行くか分からない旅の面白さを多くの人に味わってもらうことを目指している。(写真提供:関根さん)
伊藤 愛基さん(常陸frogs 1期生)
株式会社Xtraveler EVP
2003年12月生まれ。茨城工業高等専門学校 国際創造工学科 情報系 3年生(2022年1月現在)
茨城工業高等専門学校(以下:茨城高専)に入学後、シリコンバレーでのインターンを経験。シリコンバレーでの経験を活かし、ビジネスとテクノロジーの両面で問題解決に取り組む。他社ベンチャーでは新規サービスの立ち上げから、開発、マネジメントまでをも経験。現在はXtravelerの開発に注力している。
国際ハッカソンでの受賞や、メディア掲載多数。サーバーサイドの開発が得意。(写真提供:伊藤さん)
<自分をさらけ出した半年間。人生の描き方に大きな変化。>
ー常陸frogs 1期生のLEAP DAYから2年が経つんですね。今回はOBOGのビフォーアフターという切り口で、お話を聞かせていただきたいなと思っています。まず初めに、お2人がfrogsに挑戦したきっかけを教えてください。
関根:僕は学校のチラシがきっかけです。学生の負担なしでシリコンバレーに行けるというのが魅力的でした。
伊藤:僕がfrogsを知ったのは高専生同士のつながりからです。RyukyufrogsのOBOGだった沖縄の高専生が「茨城でもfrogsが始まるそうだよ!無料でシリコンバレーに行けるかもしれないから、説明会に参加してみたら」と教えてくれて、説明会に参加しました。
―当時は常陸frogsが立ち上がったばかりということもあり、勇気のいる挑戦だったかと思います。実際にプログラムに参加して、どんな変化を感じましたか?
関根:世の中の見方が変わり、自分の視野が広がり、進路もガラッと変わりました。僕、frogsに参加するまで勉強しかしてなかったんです。しかし、frogsで自分の知らない世界や仕事を知ったり、さまざまなIT×〇〇を見たりしたことで、自分は『井の中の蛙』だったことに気づきました。当時、僕は高校2年生。大学は、偏差値が上から順に行けるところに行こうと考えていたのですが、「自分は何をしたいのか?自分の人生を考えたとき、どこに行くのが最短ルートなのか?」を評価軸に進学先を選ぶことができました。
伊藤:ものの見方、価値観、考え方など、自分の評価軸が大きく変わりました。自分で言うのもなんですが、中学校時代はすごく成績が良かったんです。いい高校に行って、いい大学に行って、大企業に入って、というのが良い人生かなと漠然と考えていたんですね。しかし、シリコンバレー研修(現:グローバル研修)で出逢ったエンジニアの方々や、起業されている方、応援してくださっている方々を見て、「こんなにも楽しそうに、自分のやりたいことをしている人がいるんだ」と感じ、自分もそう在りたいと思いました。
*シリコンバレー研修で、fitbitの熊谷芳太郎さん(上段中央)を尋ねた際の1枚。
関根さん(上段左)、伊藤さん(下段右)。
ーお2人とも、大きな変化があったのですね。それほど刺激的な半年間だったことが伺えますが、中でもインパクトに残っているエピソードはありますか?
関根:僕は2つあって...ひとつは、やはりグローバル研修の10日間ですね。初日はシリコンバレーの企業をいくつか見て回り、楽しくて1日中興奮していたのですが、翌日から結構ハードで(笑)。睡眠は3〜4時間で、プレゼン準備〜発表〜フィードバック〜プレゼンをブラッシュアップ、ということをひたすら繰り返していました。正直辛かったですが、とても身になったなという実感があります。
もうひとつは、沖縄でのLEAP DAYです。茨城でのLEAP DAYのあと、RyukyufrogsのLEAP DAYで、自分のサービスをプレゼンする機会をいただいたんです。その間わずか1週間、というスケジュールでしたが、プレゼンを変えて挑みました。しかし結果、つたないプレゼンになってしまい...茨城でのプレゼンが良かった分、最後の最後に悔しい思いをして終わりました。あまり言いたくないほど辛い経験ではあったんですが、「ここにいるみんなを見返してやる!」という気持ちにもなりましたね。
*関根さんが、RyukyufrogsのLEAP DAYでサービスプレゼンをしているようす。このプレゼンのあと審査員から厳しいコメントが。
伊藤:僕もやはり、グローバル研修ですね。講師の方々の熱のこもった講義は、「すごかった」という記憶しか残っていないほどすごかったです。グローバル研修中、プログラム以外の場で、「これで良かったのかな」と疑問に思っていることがあって...。それは滞在していた宿でのことです。当時僕は、Ryukyufrogsの選抜生と同じ部屋でした。彼はひとつ年下で、自分にすごく自信がある子なのですが、僕は彼の態度に違和感を感じて...。毎日ある全体の振り返りの際に、「親しき中にも礼儀ありなのでは?」と話をしたんです。彼には分かってもらえたのですが、誰にでも臆することなく話せるという彼の良い部分を潰してしまったのではないかと、今でも悩んでいます。今となっては彼に申し訳なかったなという気持ちです。そんな経験もあり、マネジメントって難しいなと今も感じることがあります。
僕も関根くんと同じく、RyukyufrogsのLEAP DAYでプレゼンさせていただいたんです。茨城でのプレゼンが好感触だったので、プレゼンを変えずに発表したのですが、茨城で審査員をしてくださった方が沖縄にもいらしていて...。「1週間で何もブラッシュアップされていない」と言われてしまい、痛い思いをしました。それ以降、「どんなプレゼンも完璧にしてやる!」と思い、デザインや心理効果などもしっかり考えるようになりました。
*シリコンバレー研修。Computer History Museum視察。最新のテクノロジーだけではなく、歴史を学び、現在までにどのように変化してきたかを学ぶ。
―仲間とのコミュニケーションをはじめ、プログラム以外でもたくさんの学びがあったのですね。仲間といえば、常陸frogs1期生同士でも、腹を割ってのやりとりはあったのですか?
関根・伊藤:ありましたね(笑)
伊藤:お互い自分をさらけ出し、相手のいいところは素直に認めたり、相手から吸収したりしたことも、成長の糧になったと思います。
<ともに会社を経営。互いの得意やfrogsでの経験を活かす今>
ーここからは、お2人の「今」について聞かせてください。現在、ともに株式会社Xtraveler(※)を経営されていますね。LEAP DAYではそれぞれにサービスを考え、プレゼンをされていましたが、その後どのような経緯で一緒に活動することになったのでしょうか?
ホテル・旅館などの常に空いている約4割の部屋を活用した行先がランダムに決まるホテル予約サイトの運営が主なサービス。”思ってもいなかった国や地域に行ける世界”を目指し、普段だったら選択しない、出会うはずのない景色や人との偶然の出会いを提供したいと考えている。
▼プレスリリース
関根:「一緒に仕事しよう」と僕から誘いました。frogsの終盤、よくまーくんに相談をしていたんです。その中でまーくんの人間性が素敵だなと思っていて...。プログラミングというスキルはもちろんですが、人としてリスペクトしていたので、frogs終わってからも一緒に仕事できたらなと心から思っていたんです。
伊藤:初めて聞きましたよ、それ(笑)僕が通っている茨城高専は、エンジニアリングに特化した学校なので、技術力はある。関根くんには、実際に会社やチームを動かしていくのに必要な力、例えば人と話す能力などが豊富にある。お互いを補えるかなと思い、ジョインさせていただきました。
関根:やはり半年一緒に過ごしていると、良くも悪くも仲間のいろんな面が見えてきます。「あ、この人のここがいいな」という部分も見えてくるものがありますよね。
―frogsで出逢い、互いを知り、今につながっているのですね。現在お2人は4名のメンバー (2022年1月現在) とともに、サービスのリリースに向けて準備を進めているとのこと。関根さん、社長としての心境を聞かせてください!
関根:僕は全然能力がないので、メンバーに頼ってばかりで申し訳ないと思っています。みんな本当によくやってくれていますね。特にまーくん!何でもできるんですよ!マネジメントもできるし、プログラミングもできるし、”伊藤様様”という感じです(笑)
伊藤:お互いの役割分担がきちんとできているかなと感じています。僕は主に会社の内部のマネジメントや開発の調整などが得意なので、そういったことを担当しています。おしゃべりするのは苦手なので、それらは社長に頼りっきりですね(笑)資金調達だったり、いろんな方に話しをしていただいたりと、頼りにしています。
*株式会社Xtravelerのメンバー。全員が茨城県出身のチームで、茨城県水戸市に本社を置いている。この写真は、プレシード段階(事業開始前の構想段階)で出資してくださった、株式会社 小野写真館で撮影していただいた1枚。(写真提供:関根さん、伊藤さん)
―バランスのとれた、いいチームですね。お2人の様子から、自然とそのような役割分担になったのかなという感じが伝わってきます。今もよく相談し合っているのですか?
関根&伊藤:毎日のように相談してますね(笑)
伊藤:問題が起こったらすぐ社長に電話をするんですが、社長いつも電話に張り付いているのかなと思うくらいすぐに応答してくれるんです(笑)
関根:大学生になってから、携帯電話を常にポケットに入れてます(笑)
―お話を伺って、お2人ともfrogsでの経験を活かし、より充実した人生を送っている印象を受けました。
関根: frogsに参加していなかったら、普通の大学生だったと思います。理系の工学部に進み、のうのうと大学生していたんだろうなと。もともと人と話すのが好きじゃなかったので、こんなにいろんな人と会ったり、会社を経営したり、投資のお願をしに行ったりしている自分は想像できなかったですね。高校受験に失敗してからどうでもいいやという感じでしたが、今はみんなと何かに取り組むのが本当に楽しい。気持ちの面も、frogsでしばかれて成長しました(笑)
伊藤:会社にジョインしたことや、高専生をつなげるコミュニティの運営を始めたこと、タイに渡航し国際アイディアハッカソンに挑戦し入賞など、 自分でやりたいことをやって、信頼できる人を見つけて、信頼できる人と一緒に活動していく。そしてその信頼できる人に、仕事を任せることができるようになりました。自分のやりたいことを自分からどんどんやってみようというマインドや、リーダーシップ、行動力が植えついたことが今に活きていると感じています。
<挑戦し続ける生き方がしたい>
―ここからは、今後のビジョンを聞かせてください!まず、個人として、どんな未来を描いていますか?
関根:起業家として生きていきたいです。いま周りには、人生常にチャレンジし続けている大人や、有り余るほどお金を持っていながら、次々に課題を見つけてチャレンジしている大人がたくさんいます。僕も空いてる部屋を活用してユーザーにおもしろい旅を提供するというミッションをクリアしたら、次はもっと大きな課題を見つけてそれに取り組む、というような生き方がしたいなと思っています。
伊藤:個人としては、自分の好きなことをやり続けたいなと思っています。エンジニアになりたいのか、起業家になりたいのかはまだ考えきれていませんが、自分がやりたいことに必要だと思うスキルや知識、例えば法律、会社を経営するマネジメント、技術者としての素養などをどんどん吸収していき、自分が何でもできるような、どんなこともできるような生き方をしていきたいと思っています。
―会社としてはいかがでしょうか?
伊藤:サービスのリリースが第一の目標です。この会社は、資金の支援をしてくださった株式会社 小野写真館の小野社長はじめ、たくさんの方から支援をいただいています。まずはサービスを世に出してみて、世の反応を伺ってみる。エンドユーザーの方々とコミュニケーションをとりながら、社会のニーズを常にリンクさせながら、サービスを提供し続けたいと考えています。
関根:始めたからには軌道に乗せて、M&AやIPOができたらと考えています。それがゴールではありませんが、学生のうちにスタートアップしたからには、学生のうちに一度経験したいなという想いがあります。お金は欲しいですが、それがゴールではありません。一緒に付いてきてくれた仲間や自分が、次何かにチャレンジするときに、お金の面で困らないほうがいいのかなと。せっかく時間をかけるからには、ある程度のリターンが返ってきて、それをもとに各々がやりたいことにチャレンジできる、そんな循環がつくれたらいいなと考えています。
*現在メンバーは、武蔵野大学や茨城工業高等専門学校に在籍し、それぞれ学びを深めている。茨城県のプログラミング道場の運営やアプリケーションの開発、エンジニアコミュニティの運営をするなど、チャレンジ精神にあふれているメンバーたち。(撮影:株式会社 小野写真館、写真提供:関根さん、伊藤さん)
<地域の方々からいただいた機会を、次は僕らが学生に>
―frogsプログラムを通して、茨城の大人との出逢いもたくさんあったかと思います。お2人にはいま、茨城がどう見えていますか?
関根:茨城って意外とチャレンジしている大人や経営者が多いんだな、スタートアップや何かを始めるには良い環境が揃ってるな、と感じています。例えば水戸市は、行政機関が集約していて使いやすいし、応援してくれる人もたくさんいる。ビジネスをやるには魅力的な地域なのではと思います。茨城は何もないし、おもしろくないし、県外に出たくて出たくて仕方なかったのですが、今までそういう目で見たことがなかったからかもしれません。今後も茨城に本社を置いて活動していく予定です。
伊藤:学生が関わるのは親や学校の先生ぐらいですから、茨城の人ってみんな保守的だなと思っていたのですが、いろいろな方と関わらせていただく過程で、ステレオタイプが間違っていたことに気づきました。県内でも様々なビジネスの世界で頑張ってらっしゃる方や、スタートアップで頑張ってらっしゃる方がいますし、県でもスタートアップを奨励していく流れができ始めていて、だんだん環境が整ってきた感じがあります。茨城は農業の街というイメージがありますが、新しいものを生み出すことにも必死で頑張っている。僕もその一員でありたいです。
―最後に、近くで応援してくださった地域の方々や協賛企業の方々への想いを聞かせてください。
関根:よく分からない学生に、貴重な体験をさせてくださり、感謝の気持ちでいっぱいです。常陸frogs立ち上げ時に支援してくださった方々のおかげで、エコシステムが回り始めているというのはすごく良いことだと感じています。僕も次の学生のために成果で示したいですし、アドバイスできるまでに成長したいです。
伊藤:協賛企業の方々がいなければ常陸frogsは無かったですし、メンターの方々も「僕みたいなただの学生に、何でここまでしてくれるんだろう」というぐらい本気で向き合ってくださり、すごく感謝しています。選考されたとき、いろんな企業さんから協賛金をいただいているという重責を感じて、辞退しようかなとも思ったんです。いろんな方々が、いろんな想いをもってお金を出してくださっている。そういった期待に、僕ごときが応えられるか?と。半年間自分なりに踏ん張ってみて、人生が変わるほど貴重な経験をさせていただいて、送りたいと思う人生を見つけることができました。まだ、期待に応えられるほどの成果を出せていないので、一人前になって、稼いだお金をfrogsはじめ社会に恩送りしていきたいなと思っています。
*OBとして、常陸frogsに関わってくれている2人。写真は常陸frogs3期 説明会で、frogsに参加しての変化やプログラム参加中のエピソードをありのままに語ってくれているようす。こうして先輩から後輩へ、襷がつながれてゆく。
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